こうた凧揚げまつり

               幸田町の年始イベント
               こうた凧揚げまつり
               2010.1.10

 「風がない。」これじゃあ、大凧は揚がるまいに。
 そう思ったのは、会場に着いた9時少し前のことだった。
 もちろん、まつりはまだ始まっていない。
 これから、これから…。
 暖をとる焚火の前の椅子に坐る。暖かい。私がおじゃましたのは、「べっかこう」のKさんのテント。
 ちなみに、その名「べっかこう」は、三河万歳の演者を模した凧の名にも連なる。簡単に言えば、舌をペロッと出したひょうきん者を絵柄にしたもの。しかし、由緒ある伝統に則った凧の一種にその名は轟くというから畏れおおい。(笑)
「でも、これはおおまじめ。嘘ではありません。」
 万歳は、今の漫才に通ずる、歌舞と語りとの違いはありますがユーモアの源泉は同根です。
 凧と万歳がどう結びついたのかは知りませんが、正月には凧を揚げましょうとあるように、慣れ親しむみぢかなものだった。
 その「凧揚げ」が、死語になりつつあるのが現在の平成の世です。
 この会場の田園地帯一帯は、おととしの8月末のゲリラ豪雨によって広田川が堤防決壊し、すべてが水に浸かった所です。そのため、去年は凧揚げまつりも中止を余儀なくされた。
 ですから、今年の「こうた凧揚げまつり」は2年ぶりとなります。
 テントはチームごとに並んで、これは本陣兼団欒の場。そのチームもさまざま。町内、企業、学校など。浜松、田原、安城など各地からも参加。
 その他、近隣からも家族や親しい者同士の自由参加組みが自家製の凧を持ち駆けつけています。
 10時に主催者の開会宣言。その頃にはどうしたわけか、いつの間にかよい風の吹いて来て、空も晴れて、絶好の凧揚げ日和。
 ひともいっぱい集まって来て盛況です。
 小凧、中凧から始まって、いよいよ大凧が揚がると、まつりも最高潮です。大きいのは幅4m、高さ6m、15畳の大物です。
「おおっ、大きいなあ、高いな。」
 空を指さして見上げる親と子、男と女、彼と彼女、熟年の夫婦。
 図柄も競うことになります。隈取りも鮮やかな武者絵、アニメのキャラクター。形も長方形(べか)からやっこ凧、三角まで。
 突然、あっあっとため息混じりの声、上空でふたつの凧の糸が絡んだのです。一方はあえなく墜落。こんなことも始終あることのようで、またやり直し。皆慣れたもんだなと思ったりして…。
 大空を泳ぐ凧にも個性があります。堂々悠然としもの、神経質も左右に動き回るもの、偶然性だけでなく、作り手の技術の熟練度もその凧に乗り移っているようだとも感じるのです。
 大凧が20を越すほどに寒さの大空を賑わすありさまは、壮観です。そして、いろいろなトラブルがあったりしても、それは爽やかです。
「凧揚げって、おおらかなものですなあ。」
「昔からの遊びですから、のんびりしたもんですわな。」
 私の近くで誰かの声がした。
 「天上大風」という言葉を思い浮かべました。そうです、越後の良寛のものです。良寛が、子どもたちにせがまれて凧揚げ紙に書いたと言われる文字です。
 最後に、優秀賞の発表があったのですが、それはよく聞えませんでした。





 こうた凧揚げまつりの開会や表彰式がおこなわれることになる特設のステージ。
 右の白いテントは大会本部。
 大会の開会式が行われているところ。
 左の後方の自由ゾーンでは、それぞれに持ち寄った凧が揚がり始めている。

 競技(小凧部門)に参加するひとは、当日本部で受付をする。
 なぜか鷹匠が。吉田流鷹匠の実演も。
 黒に赤地の粋な半纏姿は、審査員
 暖をとるため焚火も、どのチームにとっても欠かせない。
4m*6m(15畳)ほどもある岩堀区の大凧。

 横落区の大凧は真四角(右)。後方は岩堀区の大凧(左)。
 三河万歳の演者を模したべっかこう凧(べっかこうチームの中凧)。
 僕たちの凧も、きっとじょうずに揚がるよね!


 自由ゾーンに舞う多くの小凧の群れ。写真では確認できない多くの凧があって、実際の見た目はもっと賑やか。

 飛行機雲のように見えるのは凧の足。2本に見えるが、ほんとうは4本。



大凧揚がる。
武者凧(横落区の大凧)

やっこ凧(べっかこうチームの小凧)

べっかこう凧(べっかこうチームの中凧)



武者凧(岩堀区大凧)

 大凧も大空に揚がると小さく写るが、見ている実際の目は雄大です。右隅の1畳ほどのべっかこう凧が同サイズに見えるのはカメラの近くに飛んでいる理由によります。


 雲筋が陽の光に反射して、玄妙な自然現象が…。ヨーロッパで言うところの天使の梯子です。
 右上あたり、大凧が灰色にぽつぽつとあるのが見えるのでしょうか。
 手前、空を見つめる審査員。


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